SOLIDWORKS PCB の評価版を試しましたので簡単に報告します。
インストール
プログラムは DVD で提供されており、インストールは SOLIDWORKS HELP サイトで説明されている手順に沿って行いました。。
インストールは PCB サービス、SOLIDWORKS PCB 共に特に問題なくが完了しました。プログラムを起動すると認証画面が表示され、認証すると製品版、認証しないと評価版として動作します。
インストールの直後には画面は英語で表示されますが、システムプリファレンスの設定変更により、日本語に切り替える事ができます。
これらの操作は全てうまくいき、製品版と同じ機能を持つ評版が使えるようになりました。
第一印象
最初はリボン形式のメニューに戸惑いましが、メニュー下のワークスペースは見慣れた Altium Designer の形が保たれており、それほど違和感を感じる事はありませんでした。
またインストール直後の画面は英語ですが、日本語への切り替えができ、その方法も Altium Designer と同じでした。
しかし、環境を設定する為にシステムプリファレンスの画面を開いてみたところ、設定項目がかなり減っています。これは機能がそれだけ削減されている頃を意味します。このため「Altium Designer よりもかなり機能が少ない製品」という印象を持ちました。
Altium Designer で保存したファイルが読み込めるか?
編集機能の充実度よりもむしろ、手持ちのデータが利用できるかどうかが気になります。そこで、手元にあった Altium Deisigner の初期のバージョンで保存されたプロジェクトファイル(.PrjPCB)を読み込んでみました。
その結果 PCB(.PcbDoc)は import コマンドでしか読めませんでしたが、 回路図(.SchDoc)はそのまま開く事ができました。 また新しい世代の .PcbDoc ファイルはそのままでは import できず、PCB 5.0 のフォーマットで保存し直す事が必要でした。
Altium Designer で保存したファイルの読み込み

File – Open(開く)及び File – Import のフォーマット選択ウィンドウを見ると、多くのフォーマットがサポートいされている事が分かります。
File – Open(開く)

File – Import

Altium Designer の PCB/回路図以外に、これだけのものが読めれば申し分ありません。
Altium Designer のライブラリが使えるか?
実際に組み込んでみたところ、Altium Designer の個別ライブラリと統合ライブラリのどちらも利用できる事が分かりましたました。また画面上のコマンドから、サプライヤーリンク機能が付いている事を確認しました。しかし Altium の Vault ライブラリを利用する機能はありませんでした。
ライブラリのファイルフォーマットそのものが Altium Designer と同じであり、読み込み時に変換される訳ではありませんので、 Altium Designer 用に作られたライブラリを安心して利用できます。
Altium Designer のフォーマットで保存できるか?
Altium Designer のフォーマットでデザインファイルが保存できれば、Altium Designer と双方向でやりとりができます。そこでまず PCB データをを保存してみたところ、デザインファイルは .SWPCBdoc という拡張子を持つ SOLIDWORKS PCB 独自のフォーマットでしか保存できないい事が分かりました。この .SWPCBDoc は Altium Designer の .PCBDoc と互換性がありません。しかし Ver 17.0.8 以降の Altium Designer ではこの .SWPCBdoc ファイルが Import コマンド読み込めますので、それほど不便を感じる事は無いはずです。
また、プロジェクトファイル(.PrjPCB)と回路図ファイル(.SchDoc)、およびライブラリファイルは、Altium Designer と同じフォーマットで保存され、Altium Designer でも利用できることが分かりました。
ファイルの入出力仕様についての総評
Altium Dsigner のファイルの多くがそのままま読める事に加え、インポーターが充実しており、入力環境は申し分ありません。しかし、出力については万全とはいえません。CAM フォーマットは新旧のフォマットがしっかりサポートされているものの、デザインファイルはネイティブフォーマットでしか保存できず、Altium Designer 以外のツールにデータを渡す事ができませせん。
このように、バリエーション豊かな入力に対して出力は 1種類に固定されており、データを再利用したい場合には不便です。
SOLIDWORKS PCB の編集機能は Altium Designer と、どれくらい違うのか?
SOLIDWORKS PCB の機能は Altium Designer と同等という前提で調べ始めましたが、システムプリファレンスを開くと、設定項目が Altium Designer の 3分の 1くらいしかなく、とても Altium Designer の同等品には見えません。
そこで、備えられているコマンドについて、その種類と内容を調べてみたところ、Altium Designer ではなく、その下位製品の CircuitStudio と同等である事が分かりました。評価版を試すまでは、Altium Designer の同等品だと思い込んでいたのですが、これは見事に覆されてしまいました。
SOLIDWORKS PCB で省かれている機能について
Altium Designer との住み分けの為か、多くの機能が省かれており、FPGA 配発環境、伝送線路シミュレーター、ガーバーエディターがまるごと無くなっています。従いこのSOLIDWORKS PCB は、”回路図エディタ” + “A/D 混在シミュレーター” + “PCB エディタ” というツール構成になっています。
そしてそれぞれのツールについてもも、ウィザードや表形式の編集機能などのお助け機能や、半自動機能、ドキュメント/データ出力機能が軒並み省かれています。
例えば、回路図エディタでは、
- XSPICE フォーマットのネットリストだけしか出力できない
- デバイスシート機能が無い
- 表形式の編集機能(SCH List)が無い
- スマート PDF機能が無い
また PCB については、
- 配線の押し退け機能が無い
- 面付ができない
- 極座標グリッドがサポートされていない
- スマート PDF機能が無い
- 高速回路用のルール設定項目が丸ごと省かれている
- ネイティブバイナリのフォーマットだけでしか保存できない。
これらは、ざっと見渡してすぐに気付いたところをだけを書きだしたものです。他にも多くの機能が省かれており、全体的には必要最小限の機能だけでまとめ上げられたシンプルな製品という印象です。
SOLIDWORKS PCB には、回路図から PCB ネットリストが出ない事や、PCB データがネイティブバイナリでしか保存できない事などの難点があり、データの受け渡しに困る場面も出てきそうです。しかしこれは、SOLIDWORKS PCBとの互換性を持つ Altium Designer の併用によって、補完する事ができます。
SOLIDWORKS PCB のポジショニング
PCB Connector によって SOLIDWORKS 3D-CAD とシームレスに連会できる PCB CAD は Altium Designer と SOLIDWORKS PCB しかありません。よって PCB Connector の機能を使いたい場合には、この2製品からの二者択一になり、SOLIDWORKS PCB は Altium Designer の廉価版という位置づけになります。
また Altium Designer(17.0.8以降) と SOLIDWORKS PCB には双方の互換性がある為、この両方を導入し SOLIDWORKS PCB を Altium Designer の子機として使う事もできます。
その他にもいろいろと効果的な使い方が考えられますが、もし PCB Connector の機能を省いた安価なバージョンがラインナップされれば、SOLIDWORKS PCB はさらに用途が広がり、汎用性の高いものになるのではないかと思うのですが、如何でしょうか?
機能的にも価格的にも肥大化した Altium Designer に対して、シンプルで手軽な価格の下位製品を望む声が強まってきています。この SOLIDWORKS PCB はそのニーズに応える事ができる、絶好のポジションにある製品だと思います。
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